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  • 執筆者の写真西留安雄

授業備品 NO.163(2021.6.15)みんなが主役の授業がみんなの心を包む(生徒指導3機能)

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 A中学校の生徒のことだ。小学校の入学した頃は、全員が多動といっても過言ではない状態であった。学年が進行しても、中々、成長が見えない状態が続く。担任も1年おきに代わり、その学級を維持するのが精一杯。だが、密かに子どもは必ず成長する日は来ると思っていた。現在、中学生になり、小学校の時とは違い、見違えるほど成長した。小学校の教師の努力もあるが、生徒を慈しみ包みこむような中学校の教師集団の中にいるので、子供の笑顔は絶えない。その中学校を私なりに分析をしてみた。


 まず、教師間の同一指導「学習スタンダード」が子どもたちの成長を助けていることは確かだ。学習スタンダードは、全教室、全教科で行っているため、担任が変わっても子どもたちは学びに戸惑いがない。ノートの使い方、学習過程、言語活動等、小中で同じ指導をしているため、指導者が変わっても子どもたちには優しい学びとなっている。


 また、学習スタンダードが生徒指導3機能と連動していることも特徴だ。「生徒指導は、一人一人の児童生徒の個性の伸長を図りながら、同時に社会的な資質や能力・態度を育成し、さらに将来において社会的に自己実現ができるような資質・態度を形成していくための指導・援助であり、個々の児童生徒の自己指導能力の育成を目指すものである。そのために、日々の教育活動においては、①子どもに自己存在感を与えること ②共感的な人間関係を育成すること ③自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助することの3点の指導が重要である(文部科学省)」とある。学習スタンダードと連動した生徒指導の3機能を生かした授業とは、①自己存在感を与える(全員がホワイトボードに意見を書く) ②共感的な人間関係(ペア・グループ・ゼミ形式) ③自己決定の場(振り返り)等のことであろう。すなわち、子ども同士のつながりの深い学びである。


 「自己存在感を与える」ためには、教師から授業の中で「よくできたね」「がんばっているね」など、承認や賞賛、励ましをすることが考えられる。だが、「自己存在感を与える」とは、教師だけでなく、学ぶ仲間からの励ましともいえる。毎時間の振り返りの、ペアでの「ほめてアドバイス」がその例だ。


 また、「共感的な人間関係を育成する」ために、教師がよい姿はほめ、好ましくない姿は毅然とした態度で一貫性のある指導等が考えられる。だが、これだけではない。まず共感的な人間関係とは、教師と子どもとの関係だけではないからだ。授業でどの子も自分の考えをホワイトボードやタブレットに書き、子ども同士がそれを認め合うような場面で共感的な人間関係はできる。

 さらに、「自己決定の場を与え、自己の可能性の開発を援助する」ことは、子どもが一人で調べたり、考えたりする時間を十分に与える等が考えられるが、これもそれだけではない。指導校には、「まとめ」は、子どもそれぞれにより内容が少々違ってもよいと指導をしている。これまでの教師の考えたことを全員が書き写すことは、本来のまとめとはかけ離れている。まとめの内容が課題とつながっていなくても、本人が書いたことをよしとして欲しいと伝えている。


 私たちが何気なく行ってきた一斉指導、「挙手・指名・発表」「教師と分かる子との一問一答」「班長が代表をして発表をする」、この手法は、教師主体の授業そのものだ。時代は、ALで子どもが主体的な授業を求めている。生徒指導3機能は、こうした指導が少なくなれば一層機能すると思う。


 最初にご紹介したA中学校の修学旅行での生徒の動きの話を聞き感動した。海外の海に泳ぎに行った時のことだ。泳ぎがうまくできない女子生徒を男子生徒が気遣い、そっと周りから見ていたとのこと。生徒指導3機能を生かした学習スタンダードがこうした場面に形となって出ていると感じた。また、A中学校の生徒指導3機能は、「教師の3機能」、どの子も見捨てない、学習スタンダードで同じ指導をする、教師同士が学び合うことと連動している。


 教師たちに会いに行く楽しみもあるが、笑顔で待っていてくれる中学生に、私も南の風に乗り、会いに行っている。さて、今度はどんなことを話そうか思案中である。中学生に感謝。感謝。そして先生たちにも感謝。

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