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  • 執筆者の写真西留安雄

授業備品 NO.185(2022.5.29)「子どもが自ら創るセルフ授業」

更新日:2022年8月12日

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子どもが自ら創るセルフ授業

セルフ授業(子ども全員活躍型)とは

 学力が向上した学校は、一人のスーパーティーチャーが活躍するのではなく、全教師が活躍している。昔のような名人芸に近い授業をする教師が授業をする学校ではない。その授業は、教師中心ではなく、「子ども活躍型」の授業だ。

 その核となる「主体的・対話的で深い学び」は「子どもが授業を創る学習」だ。子どもが学び合いの中で自分の考えと違うときは相手に質問し、仲間と心を通わせ話し合い、分らない仲間に教える、そんな授業だ。

 子どもたちが主体的な授業を創るためには、子ども自身が学び方を習得する必要がある。それには、指導者側に時間や労力がかかる。しかし、一旦子どもたちが学び方を身につければ、自分たちですいすいと授業を進めることができる。これが特長だ。

 セルフ授業とは、そうした授業のことをいう。子どもたちが教師を頼らず自分たちで進める授業だ。街角にセルフガソリンスタンドやセルフレジがあるように、学校にもセルフ授業があってもよい。セルフ授業は全国ではすでに始まっている。


「学習過程スタンダード」「高知県授業づくりベーシックガイドブック」

 セルフ授業の前に行わなければならない授業は、①子どもが主体的な授業 ②子供同士が対話をする授業 ③子供同士が深い学びをしていく授業等だ。子どもたちが学び方を身につけていなければならない。私たちは、そのためのテキストとして全教師が教科を超えて授業を進める「学習スタンダード32」を開発した。高知県では、「高知県授業づくりベーシックガイドブック(高知県教育センターHP)」だ。いずれも導入から、学び合い、まとめ、振り返りまでの授業の流れが具体的に示されている。また、子どもや教師の動く場面も掲載されている。高知県の初任者は、研修用の必修テキストとして持っており、授業づくりには必要なアイテムとなっている。

 当初は教師向けの「学習過程スタンダード」として開発した。それが子どもたち自身が教師と同じように学び方を身につけるナビゲーションにもなっている。学習過程スタンダードは「型」ではないかと厳しいご指摘もある。だが、子どもたちだけで授業を進める姿を見れば、そのよさが十分にお分かりになると思う。


セルフ授業とは何か

 セルフ授業とは、教師の一方通行型授業(教師の教え込み)や一問一答型授業(教師の教え込み)ではなく、子ども同士が交流をする授業(アクティブ・ラーニング)のことだ。その中で教師ぬきの授業をセルフ授業と称している。

 セルフ授業を始めたきっかけは、2つある。まず、学級を2分割にして人数を減らして中人数で考えを深め合うことからセルフ授業とネーミングをした。高知県の教師は、複式学級を多く経験している。子どもたち自身で進める授業をいつも行っているのでセルフ授業はとりわけ特別なことではない。第2に他学級の研究授業を教師が参観するとき、これまでは自習を行っていた。この時間をセルフ授業とした。子どもたちは、教師を頼らない授業方法を熟知しているので、教師ぬきの授業ができている。

 なお、初めは予想しなかったことも起きた。これまでの授業の常識であった教師が教えるが覆り、子どもたちだけで主体的に学ぶようになったことだ。また、セルフ授業により学力が向上しただけでなく、子どもにとって居心地のよい学校となっているようだ。

 子どもたちは、セルフ授業により教師へ存在することも低くなっている。子どもを信じ、授業を子どもに委ねるという教師の姿勢が根底にあるからだ。こうしたことは、いきなりできることではない。子どもたちが学び方を一つ一つ覚え、自分たちのサイクルで授業ができるようになるには時間がかかる。それも教科横断的に行う。これまで教師が行ってきた板書や授業準備等も子どもたちが担当する。高知県内の訪問校では、学期に1回、「セルフ授業大会」を行っている学校もある。


セルフ授業の意義

 子どもたちが自ら授業を進めるので、まず、子供の主体性が育つことは間違いない。「教師を頼らない」と言う子どもが出てきたら本物だ。次に教師のこれまでの授業観が変わると思う。教師自身が学校時代に受けてきた授業をコピーするような姿があるのは当然だ。だが、その授業では教師は変われない。セルフ授業では教師が変われる。

 さらにスーパーティーチャーは必要ではなく、全教師が学習過程スタンダードを身に付けることで授業力が上がる。子どもたちは、クラス担任や教科の担当が変わっても、同じ授業方法を学んできているので戸惑いはない。また、学習の苦手な子が進んで学習に参加するようになる。セルフ授業は、子ども同士で教え教えられたりすることが多いからだ。課題解決学習の自力解決の場面では、学習内容が分からない子は仲間に聞きに行く。

 最後に学力が向上することは確かだ。教師がいなくなるセルフ授業でも同じようにノートやタブレットを使い自分の考えを確実に書く。これが学力の向上につながっている。


セルフ授業の手順

 これまで一日の大半を「分かる子と先生の授業」の中で過ごす子どもを見てきた。複雑

な気持ちであった。そうした授業を見る度に、授業改善を促さねばという思いが強くなった。全員が活躍するような授業であれば子どもは、にこにこと授業に参加する。そこでセルフ授業は、一斉講義型授業からアクティブ・ラーニングに変えるところから始めるとよい。前掲の図のように授業は、毎時間、学習する内容は教科により違う。だが、学び方の指導(学習方法)や全員活躍型学級風土づくり(学級集団)や基本的生活習慣の育成(規律・態度)等は重なっている。重なる面の学習過程スタンダードによる授業、学級力の向上、生徒指導の工夫等は、全指導者が強く意識することが重要である。なお「学び方」の指導は、段階があるので注意して指導をする必要がある。

 授業4層構造のうち、さらに「学び方」の4階段を紹介する。まず教科内容の指導を行う前に学び方を指導することが重要だ。学習過程スタンダードやベーシック型の授業はいわゆる「型」ではない。学び方が進化していくからだ。まず、子供たちは初期の学習過程スタンダードやベーシックの授業スタイルを学ぶ。その学び方を身につけると次に進化型スタンダード(高知ベーシック)を学ぶ。この段階で子どもたちは「教師を頼らず自分たちで学ぶ」方法を身につける。ここまできたらほぼ学学び方の完成だ。これで「セルフ授業」が可能となる。

 なお、セルフ授業が難しい場合は、高知県佐喜浜小学校のように、「Tサイレント授業」を行うとよい。授業では課題からそれてしまったり、止まったりしてしまう場合がある。この時どう対応するのかについて、事前にそのリスクを予想し、子どもたちだけで乗り越えていく対応の手順を示しておく。セルフ授業を進める「教科リーダー(司会者)」にだけ、教師が助言をする。その教科リーダーは、事前に授業の予習をしてくる。こうした手順を踏み、セルフ授業に入る。これがセルフ授業の前の「Tサイレント授業」だ。


セルフ授業で子どもは変わる(高知県佐喜浜小との対談から)

 セルフ授業を行うのは、子どもたちが自分たちの学び方の向上と学力(思考力・表現力・判断力)向上、そして副産物的に得られる仲間意識や達成感などを得るためである。そこには「見てもらうために」という意図はほとんどない。でも見てもらえる時には、子どもたちはスポーツの試合に出ているような「ワクワク感ドキドキ感」を感じている。だから「セルフ授業」を公開授業にする場合に、高知県越知小学校や浦戸小学校のような「セルフ授業大会」という「大会」をつけた開催となっている。

 学習をする時に、子どもたちが常にワクワク感ドキドキ感を感じることができる時は、そんなにない。また、学び合い「考察」がしっかりできる道のりは、そんなに簡単ではない。そのような中で学習過程スタンダード実践校の子どもたちはなぜセルフ授業をいやがらずにどちらかと言えば喜んで行おうとするのか。その理由を考えてみた。子どもが夢中になる6か条というもので、おもに体育・運動遊びについて書かれたものであるがセルフ授業にもあてはまる項目が多くあることに気づく。

 セルフ授業がうまくできたら、先生にも褒められる。また、セルフ授業の基本は、肯定的評価であるから、授業中に認め合う場面は多い。4の項目については、セルフ授業には、勝負がありそうではないが、子どもたちは、「みんなが考えてみんながわかったら勝負に勝った」という感覚を持っている。だから「大会」というネーミングにも違和感を持っていない。6の「考え、創造できる」これこそ、学習過程スタンダード授業が求めている真髄である。一番難しいのが、1であろう。全員が深い学びの域まで到達した授業はまだ道半ばだ。

以上、子どもたちがセルフ授業に前向きに向かうのはなぜかがおおよそつかんでいただけたのではないだろうか。セルフ授業は、「子どもたちのものである」ということを直に感じさせてくれるし、それが教師の「働き方改革」にも確実につながる。


子どもの変化に歓喜

 沖縄県の南城市の佐敷小学校も学習スタンダードを全校体制で取り組んでいる。セルフ

授業も行っている。教師たちから聞いた言葉が心に残っている。「学習過程スタンダードやセルフ授業は、すぐに子どもたちの変化が現れた。子どもたちが活き活きと学習にのめり込むようになった。なによりも衝撃的だったのが、学習に苦手を感じている子たちが、自分から輪に入り、みんなと一緒に授業に参加し、しかも活躍する場面が見られるようになった。これまで、私たち教師は、授業の中で学力の低い子たちをどのように参加させ、自信を持たせていくかということに長い時間、努力と工夫を重ねてきたはずである。それが,一瞬で解決した。」。この言葉を聞き、私も感激した。


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