第3章 動く考察
1 越知ゼミ方式(高知県越知小) (授業備品95)
『越知ゼミ方式』とは、「集団解決」の場面を3~6つのグループに分け大WBを活用することで、全ての児童が気軽に質問したり説明し合ったり考え合ったりすることができる場面を意図的に設定する方法である。これまでの班学習から、即、集団解決(全体学習)に入る方法を見直し、自力解決→班学習→越知ゼミ方式→全体考察・まとめと進む。【6年生社会科の学習】
①提示資料からの気づき等の交流から課題を設定し、自力解決に進む手立てを確認する。
②自力解決を行い、その考えの骨子を付箋紙や短冊(ラミネート仕様)等に書く。
③ノートや短冊等を用い自分の考えを伝え合う班学習を行う。
※この後すぐに(集団解決)には移らず、集団解決を2段階で行う『越知ゼミ方式』に進む。】
④『越知ゼミ方式』の前半の部では、5~7人のグループで大WB上に各自が書いた付箋紙や短冊を張り出し、KJ方法等で分類しながら学習課題の解決を図る「考察」を行う。その後、課題解決に迫った自分たちの考えを別の短冊に整理する。
⑤後半の部では、整理された短冊を集約し、全員の創意として学習課題の解決を図っていく。その方法は、全員により集団解決やワールドカフェ方式等で学びを共有するなどの方法がある。その後、自己の学びや気づきをまとめ振り返る。
2 全員参画型授業づくりから学習づくりへ
『越知ゼミ方式』を取り入れることで、児童がより「自分事」として考えることができるようになり、全体学習での集中力が変わった。これまでの教員対一部の児童による学びが消え、深い学びとなりにくかった児童が主体的に学びに参加できるようになった。アンケート結果では、『越知ゼミ方式』だと自分が分かりにくかったことを伝えやすくなり、学習がわかるようになってきたという記述が多かった。児童の振り返りからは少人数による学び合いから安心感が生まれ、わかる喜びにつながっていることが伝わってくる。
また、成果につながった要因として、児童が互いの気づきや考え方等をつなぎやすくするために、大きさ・色の違う短冊(ラミネート仕様)、思考ツール、「孫カード」(教科用語や言語ツール)をグループごとに用意するなど、大WB上で児童が操作活動をしやすいようにした教員の支援も大きい。児童は付箋紙を操作することで思考を視覚化でき構造化することを通して、自分の考えとの違いは何か何が問題なのかなどを、自分事としてしっかり考えることができるようになってきた。また、グループ数の増加により活躍できるリーダーの数が増え児童の士気が高まった。併せて、WB上に全児童の記録が残ることにより、児童の思考を見取り評価にも生かすことができた。
『越知ゼミ方式』は、まだまだ工夫改善の余地がある。今、求められている児童が主体的に仲間と協働し対話を通して学び方を身に付けながら「深い学び」をめざす「授業づくりから学習づくり」を模索することである。『越知ゼミ方式』は、これからの時代を生きていくために必要な力を育むための方策の一つであると感じているセルフ授業で子どもとともに作る学びである。
3 「中グーループが大きなホワイトボード上で構造化を図る考察
(備品NO100)
考察の進化した形として「中グーループで大きなホワイトボード上で構造化を図る考察」をご紹介する。これまで、全員で最後の考察(練り上げ)を行うのが定番であった。この方法も一つの考察方法だが課題がある。数人の子が挙手をするが、必ず「隠れる子」が出てくる。特にC層の子たちだ。その解決方法として、班(4人)から中グループ(8~10人)で考察を行う方法がある。全員活躍型の授業となるはずだ。ぜひ、試していただきたい。
(1) 社会 付箋を中ホワイトボードで構造化+4回の考察(6年「暮らしの中の政治」高知県越知小)
中グループ(班員とは違う人・6グループ)で大ホワイトボード上を使い、付箋を出し合い構造化を図る。1回目の考察は、一つの考えにまとめない。創意付箋は、ゼミの考えを3~4枚に記入)
教師による「挙手→指名→発表」スタイルは、発表者がAB層の子に偏る。これは、授業ではない。学び合いが一部の子供だけに偏るからだ。この解決方法が「付箋やホワイトボード小・中・大」等のアイテムを使った「ゼミナール形式の考察だ。数人の子による「挙手→指名→発表」と違い、全員が何らかの「作業」を行い、中グループでの話し合いが主となる。8~10人位の中人数であれば、全員が主役となり話し合いに参加できる。
2 3色マーカーを使った考察 (授業備品101)
3色マーカーの使い方
今回は、このことを押さえた上で「3色マーカー」を使った実践(高知県三原中学校の音楽.鑑賞)をご紹介す1 る。まず、前時の復習を「学びの足跡(前時で使ったホワイトボード)」で確認をする。前時のまとめや気付いたことをホワイトボードに残しておいたことにより、本時の導入での復習や既習の想起に活用することが出来る。
次にCDを聴き、小ホワイトボード(30センチ×20センチ)に初発の感想を全員が書く。その後、小ホワイトボードを持ち寄り1回目の考察を行う。次にCDを聴き直し、大ホワイトボード(1m×1m)上に「孫カード」(本時のキーワード)を散りばめながら再度の自力解決を行う。そして、仲間の書いた大ホワイトボードを見て廻る「ぶらぶらタイム」で3色マーカーを使って下線を引く。最後に大ホワイトボードを集合させ、マーカーで下線を引いた所を中心に2回目の考察(深い学び)を行う。最後にまとめと振り返りを書き授業を終える。
この授業を観て評価する点は、全員が自分の考えを小ホワイトボードに書くことだ。また、3色マーカーで仲間の考えに下線を引くので考察の話し合いの内容も深い。三原中学校は、全教科で必ずホワイトボードを使用しているので子どもは物怖じしないで書くことが出来ている。教師が挙手をさせて一部の生徒が発表するような形式ではないため、生徒自身が授業を創ることが見事に出来ている。さらなる工夫する点は、ホワイトボードがなくても仲間のノートにラインを引く方法でもよいと思う。あえてホワイトボードを用意する必要もなく、どの教科でも気軽に行えるからだ。
なお、これからホワイトボードを使用する学校は、まず、3色マーカーを全教科で積極的に使うことを確認するとよい。これまでの教師が子どもに挙手を促し、一部の子が発表することもなくなるだろう。授業は教師が創るのではなく、子供が創る授業となるはずだ。なお、三原中学校では、授業前日に子どもの学習リーダー(進行役)と教師と授業の進行の打ち合わせを行っている。教師がいない時は自分たちで授業を行うことも出来る。
①各自がノートや小ホワイトボードに考えを記入。(自力解決)
②ペアや班で内容を紹介し合う。
③各班でホワイトボード(大ホワイトボードがよい)等に考えを整理する。
④全員が3色マーカーを持ち、自分の班以外の大ホワイトボードに線を引く。
⑤3色マーカーで記載されたホワイトボードを眺め、質問や共通点を見つける考察・深い学び、この後ワールドカフェにいく場合もある。
3 ワールドカフェ方式(備品NO46)
かつての勤務校では、子供も教師もワークショップの一つとして、一グループ5人程度のワークショップをメンバーを代えて2回行っていた。その後、全員でワークショップを20分間行う。参加者は、一人40秒以内で自分の意見を述べる。全体会では、ワークショップで学んだことを全員が発表する方法をとった。HRや道徳や研究協議会で取り入れていた。また、子供たちには「ノート展覧会方式」でも周りの意見を参考にさせていた。
~ワールド・カフェは1995年にアニータ・ブラウンとディビッド・アイザックスによって始められました。メンバーの組合せを変えながら,4~5人単位の小グループで話し合いを続けることにより,あたかも参加者全員が話し合っているような効果が得られる会話の手法です。その名が示すようにカフェのような,リラックスした肩の凝らない雰囲気ができやすいことから,プロジェクトやチームの,様々な利害関係者の新しい関係作りを進めていきたい場面などに使われることも多いようです。~(香取一昭・大川恒 著「ワールド・カフェをやろう!」)
(1) ワールドカフェ方式の方法
①4人一組で席に着く
ひとつのテーブルに4~5人(原則4人)が座る。この人数だと、話す時間と聞く時間のバランスがとりやすく話し合いの手法としてワールドカフェ形式が活きてくる。なお、議論のテーマはどのテーブルも同じである。
②紙に意見やアイデアを書く
テーブルの真ん中にそれぞれ用紙が置いてある。そこに議論の中で浮かんできた疑問やアイデアを自由に書き込んでいく。このような方法で行えば、移動してきた人もその前にどんな事が話されていたのか分かりやすく、意見も出しやすくなる。
③一定時間で1人を除き席を移動する
20~30分程度の話し合いを数ラウンド行う。そしてラウンドが変わるごとに1人を残して全員が他のテーブルにそれぞれ移動する。この方法であれば、ラウンドごとに別のテーブルの話し合いに参加できる。残った一人は移動してきた人にそのテーブルで進んだ話の内容を伝えた後、議論を行う。
④参加者全員で情報共有をする
最後は全体で情報を共有する。特に、同じ意見になった点について、より深く掘り下げる。ワールドカフェ方式は、答えを出す事をゴールにした話し合いの方法ではない。参加者がオープンに会話をし、新しいアイデアや知識を生み出すのが目的である。
(2) ワールドカフェ方式の効果
ワールドカフェ方式は、話しやすい環境で参加者が口を開きやすいという点だ。大人数の前で発言するよりも、少人数の前で発言しやすいからだ。また少人数で距離が近く、話を聞いてもらいやすい環境のため、自分の意見を言いやすいという効果もある。また、相手との繋がりを意識できることだ、。ワールドカフェ方式はディベートのように否定される事はない。自分素直な意見を否定されず、尊重されるのでより対話が活発になる効果がある。相手の意見を聞き、繋がりを意識しながら自分の意見を伝えられるので場の一体感を感じとることが出来る。更に、参加者全員の意見や知識が共有できることだ。テーブルを移動するたびに、直接でなくても、先に議論をした人達の意見を知ることが出来るという効果がある。これは移動の回数が増えるごとに効果が増す。テーブルでは少人数で話しているにも関わらず、多くの人との意見交換や知識の共有ができる。
(3) 留意点
ワールドカフェ方式の方法は、テーブルあたりの人数が6人以上だと議論が活発にならない。リーダーや進行役がいれば自由な発言をしにくく、活発な意見交換が阻害されてしまう。テーブル毎にテーマが違えば、移動してきた参加者は意見を出しにくい。そしてワールドカフェ方式が始まる前に、最後に結論を発表してもらうといったアナウンスがあると、何か結果を形にしなければと、やはり自由なアイデアは生まれにくくなってしまう。
*校内研修事後協議会や教科指導でこの方式をとることが出来る。試してみる価値がある。
4 生徒が動く考察 (授業備品NO221)
これまでの考察方法の常識は、やはり「全員が黒板を見る考察」である。ここに疑問を持ったことはないだろうか。黒板を見ての発表スタイルは、「一斉授業型考察」である。確かに簡単に全員が「分かった」という気持ちになれるような気がする考察だ。だが、全員の生徒が本当に分かったという気持ちになるだろうか。
(1) 一斉授業型の黒板を全員で見る考察の課題
①一斉授業に戻るため、班やゼミスタイルから一旦離れての考察となる
②特定の生徒(分かる生徒)の発表となるため、全員参加型とはならない
③考察で教師自身が発表する場(話す)と決め込んでいるため、生徒は聞くことだけの受け身になりやすい
④授業の最初から生徒が主体で来た学びのスタイルが、突然、考察時に一斉授業スタイルになるため、生徒の学
が不自然な流れとなる
⑤日本では、考察方法は一斉授業スタイルであるという教師の思い込みがある
(2) 考察方法の改善策
①班学習やゼミナール形式の中グループ学習を終えたら、班やゼミスタイルの場に生徒が動き、説明を聞く
②一斉授業での前を向く方法と生徒が説明を聞く場所に移動する方法を組み合わせる
③全教科で黒板を見るかつての方法(教師主導)を止める
④板書は、生徒が動く方法では進行役が務めるが、行わない場合もある
⑤自然体の授業の流れでの学びに教師が意識を変える
(3) 生徒が動く考察の具体
中2の理科、説明者の所に行き考察を行う 中3の社会、班員の全員が説明を行うので説明がわかる
班員の所に全員が聞きに行くので挙手もなくなった。休み時間のように自然と会話が進む。構えず考察を行うので授業への生徒の、のめり込みも多く見られた。考察を行うスタイルには一定の形はないと考え、様々な方法を試すとよい。中学校は、こうした「生徒が授業内で動く」ことは必須なことだ。座学は、苦痛だと思う。
5 進化型荒尾ベーシックの実際 (授業備品NO227)
一部の子供たちの素晴らしい意見をつないでまとめる授業にはならないが、どの子も満足感がある授業づくりこそが、2極化の克服につながる➡授業者の意識改革が求められている。 |
具体策
・3人グループでの班活動
4人の班では、お話しをしない子供が出る。3人にすれば、必ず何らかの意思表示をする。
・一人学び+教え合い
孤立型の自力解決は行わない。「話し合って・教え合ってから」の自力解決は当然のことである。
・挙手・指名を極力減らす
挙手をするときは、全体の場で行う。挙手はしなくてもよい時間は、自然体で会話する。
・子供たちの作業を多くする
小ホワイトボードが中グーループのホワイトボードに発展し気づきのホワイトオードに変わる一連の作業。
また、全員がホワイトボードや付箋紙、タブレットに意見を書く作業を多くする。全員参加型とする。
・一部の子どもによる全体考察を減らす
分かる子と教師だけの授業の構図は止める。時に教師が分かる子の挙手に飛びつかない。全員が参加しての中、ゼミナールの話し合いを取り入れる。
・班の代表者に班の意見をホワイトボードへ書かせない
ホワイトボードに班で考えて書くとしているが、代表者が書いているのが現状だ。これでは、全員の意見を取り入れることができない。全員がホワイトボードアや短冊、タブレットを使用する。みんな活躍型にする。
・全体考察を減らす
毎回の全体考察を減らす。全体考察は、全員で考えを「つまり」を主語に確認することになるが、どうしても班や中ゼミナールの焼き直しになる。ワールドカフェがしっかりと機能していれば、そのグループで「考察」や「まとめ」を完結してもよいと思う。
6 説明文を書くノート(記述式問題への対処・ぶらぶらメモタイム)
(授業備品NO181)
●説明文を書くノート(記述式問題への普段からの対処)
文章題の立式はできるが、式の意味を説明することが難しい子供がいる。記述式問題の正答率が悪い原因の多くは、授業で「説明」を重視していないことに行き着く。
問題文から自分が立式した式について、その根拠や理由を明らかに説明できる子供を一人でも増やすための手立ての具体的例を高知県A小の実践から示す。
〇高知県A小の「説明」を重視する指導
このノートは、普段からの指導が出来ているから書くことができていると思う。「説明」の仕方が教室内に貼ってあることや、ノートに説明モデルが書いてあることは必須なことである。
自分が書いた説明が正しいかどうかを子供に気づかせるには、どんな説明の書き方がよいかを指導しておくことが重要である。
A小では、説明をかくための具体例を子供たちに示してある。
◎上手に説明をする(書く)ための指導のポイント
①言葉の式から説明に必要な言葉を選ぶ。
②計算の順じょに従って、説明を書く。その際、「まず」「次に」「そして」などの順じょを表す言葉を使う。
③キーワードを入れる。
●ぶらぶらメモタイム
「ぶらぶらタイム」は子供が主体的な学び上で必須なことである。だが、ただぶらぶらしていることに課題があることに気付いた。その解決のための「ぶらぶらメモタイム」を提案したい。話の聞き方とメモの仕方である。
①大事な言葉(キーワード)に着目して聞く。その後、短い言葉で書く。見出しをつける。
②順序や理由を表す言葉に気をつけて聞く。話の順序を表す言葉「まず 次に それから 最後に」。理由を述べるときに使う言葉「なぜかというと」「だから」「そのわけは ~からです」。
③話の内容をイメージしながら聞く。その後、記号や図や絵などを使って書く。
④話し手の方を見ながら聞く。
普段からペアやグループ学習等で書いたメモをお互いに見せ合う機会を作るとよい。それぞれのメモで工夫したところや改善点を話し合う交流の場を設定することにより、自分のメモを書き直したり書き足したりすることが出来るようになる。
メモの仕方は小4年の国語で取り上げているくらいだ。教科の内容を指導することも重要だが、地道なメモの仕方を全教科で指導することが重要である。
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