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第1章
第2章
第3章
第4章
資料
第5章
<第1章より>
学びを起こす授業改革(2021) アクティブ・ラーニング
進化型 smile 授業スタンダード 32
子供たちへ~なぜ学校に行くのか?~(備品 NO.135)
1 隣に聞く、隣を利用しよう 学校に来る理由の1は、分からないことがあったら、隣に聞く、隣を利用することです。学校にはたくさんの 仲間がいます。「教えて」「分かった」という声が聞こえる授業が実は当り前の授業なのです。ぜひ、分からない ことがあった仲間に聞いてください。分かる人は教えてあげてください。そのために学校はあるのです。
2 アウトプット(考えを発表する) 学校に来る理由の2は、アウトプット(自分の考えを話す)をする場だからです。人が生きていく上で知識を 知っていることも重要ですが、相手に自分の考えを伝わるように話せなくてなりません。これまでの授業で先生 と子供との対話で「単語」で話すことは、人と人の対話ではありません。単なる「合図」です。また、アウトプ ットでもありません。アウトプットは、自分の考えを理由を添えて話すことです。アウトプットの機会が多いと、 自分の考えをまとめたり整理することが出来るようになります。なお、アウトプットでは、聴く方の姿勢も大切 です。話を聞いたうえで、「つまり~ということですね。」と、言葉を解釈して返すようにしましょう。
3 書く(振り返り)
アウトプットが出来るようになると、自分の考えをまとめられるようになります。また、人に自分の考えを説明するときに、書いたものがあると、言いやすくなります。何よりも書くことが苦手ではなくなります。学校に 来る理由の3は、書くことが出来るようになるためです。代表的な場が「振り返り」です。振り返りには、形式 はありません。心で感じたことを自分の言葉で素直に書けばよいのです。振り返りに書き慣れると、たくさん文 が書け、学習の内容が理解できるようになります。
4 アクティブな活動
学校に来る理由の4は、授業中、積極的に動いて仲間の考えを聞き話すようにしましょう。アクティブな授業です。全員が前の時間の振り返りを立ってのぶつぶつタイム。一人学びの前に分からない仲間に教えに行く。ペ アや班でホワイトボード・短冊等を使い、10 人位の人数で行うゼミナール形式での討議。みんなの考えを見に行 くワールドカフェ。全体での考察。このように連続した動きのあるアクティブな活動が続きます。一人ひとりが 授業に参加しているという実感を持てますので学習内容が分かるようになります。「授業を先生中心から、生徒中 心に変えること(アクティブな活動)」の日本への提言は、PISA(OECD 国際機関)からも出ています。
○提案する進化型授業スタンダードは、あくまでも一つの例である。
○学校独自の詳細な「学習過程スタンダード」を作成するときの参考にする。
○高知県作成の「授業づくりBasic ガイドブック」も参考にする。(HPにあり)
○学習過程スタンダード 38 で学び方を身に付けてからこの進化型授業スタンダードに入る。
第1章 授業の見直し
1 「仲間にやさしい「教え合い」(備品 NO.128)
よい授業はどのように行えばいいのだろう。さほど難しいことではないと思う。教師の巧みな技による授業は、 その教師だけが「すごい授業」となる。こうした授業をこれまでたくさん見てきたが、全教師のものとはならない。 私たちが何より見たいのは子供達の目の輝く授業だ。それも全員の子供が満族する授業だ。 東京で学校や授業改革を行い、授業力や学力の数値を上げることの経験を積んだ。方法は、教師一人ひとりのバ ラバラな授業スタイルをスタンダードの形にした。手ごたえを十分に感じた。多くの県からの研修依頼も受けた。 その中で、ある県から派遣された教師の言葉が忘れられない。 「この学校では、一人ひとりの先生が自分流のやり方で教育活動を行うことが、他の先生には受け入れられない ような気がします。特に授業は、各々の先生が自分流のやり方で授業を進めることは、ほとんどないと思います。各先生が自分の判断だけで授業の展開を組み立てていくのではなく、同じ学年の先生方が協力して一つの指導案を作成しています。板書型指導案がよい例です。指導内容を板書に書き、チーム(メンター)で検討し、学年指導案とし て作成をします。だから、どの学級でも、ほとんど同じ内容や方法の授業展開が行われているのです。」自校ではこ の言葉の通りのような仕組みで授業を行っていたので教師の授業力が向上したと思う。 だが、それだけではない。子どもを真ん中に据えた授業を行っていたからだ。全教師で学習指導要領の趣旨を分析した。すると、一つの課題が見えた。前学習指導要領は、子どもが「自ら学ぶ」ことがキーワードとなっていた。 指導要領の改訂があっても、子供が「自ら学ぶ」の文言は続いた。そのことを自校の授業に照らし合わせてみると 一つの課題が見えた。「子供が自ら学ぶ」としているが、教師側からの指導方法や授業改善に終始していたとことだ。 授業は、教師が創るのではない。私たち教師は授業では「黒子役」になり、子供が授業を創るように後押しをする 役が求められていることに気付いた。子供側からの視点で授業改革を進めていないことに目が覚めた。 新学習指導要領は、「自ら学ぶ」が「主体的」に変わったが、子どもの動き方はさほど変わらない。多くの学校で は、その動き方を文章化し、授業改善の目標に対しての工夫がなされている。1教師が「教える」→「学びとらせ る」。子どもが「教わる」から「学びとる」。 2教師の「教えたい」を子どもが「学びたい」に変える。いずれも よい授業改善の目標設定だと思う。ただその解釈に私たちが気付いた子どもの目線からの授業改善目標を付け加え たらどうであろう。そのためには、まず、教師主導から子供主体の授業への転換となるための授業改善チェックが必要だ。授業備品 122 号に示した授業の課題とメタ認知を参考にしていただきたい。 また、子供達は、毎日学校へ何をしに来るのかを考えてみることも大切だ。学校が存在するのは教師がいるから だけではない。子どもが一人で勉強するなら家でも出来る。学校や授業で子供が1学習がわからなければ、仲間に 聞く 2隣の書いたノートを見ることで理解をする 3一人で効率が悪いからが授業という場がある 4友達同士 で教え合うのは学校でなければ出来ない、だから学校や授業があると思う。 このことを中心に考えれば、授業は子ども達にとって「教え合う場」である。深い学び、協働的な学びだけでは なく、子ども達同士の「教え合い」で授業を進めるとよい。その子供達同士の「教え合い」で進める授業の基本形 は問題解決的な学習だ。その中には7~8の学習過程がある。その学習過程だが、今回は、ペア活動に焦点を当て てみる。指導校では、「自力解決」とは、言わないようにと指導をしていた。「一人学び&教え合い」だ。学習課題 の解決の自力解決の前に、解決の見通しがもてるかどうかのグーパーチェックを行う。多くの子供が解決ができる となれば「自力解決」に移る。そこからドラマが始まる。課題を解決できた子は、解けない仲間のところに行き一 緒に考える。教え教わる場面となる。学習が理解しにくい子は、全体の前で質問し、分かったと意思表示をするの は難しい。だが、複数の仲間との1対1の関係なら聞きやすい。「教え合う」授業は、一見、学習の進度が遅くなる と思いがちだが、一旦、歯車がうまく回りだすと学習の進度も早くなる。「教え合う」授業が多くの学校で行われる ことを期待したい。 私たちが、目的地への道が分からなければ人に尋ねる。ごくごく当たり前のことだ。こうした街角と同じく、学級内に仲間にやさしい「教え合いの場」を創ろう。特に学習の苦手な子にとってのオアシスの場にしたい。
2「子供が真に主体的に動く授業(備品 NO.122)
「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」の授業を目指すことが私たちに課せられた目標だ。そこで、教師ではなく子供が「主体的な学び」が出来ているかどうかの自己評価をするとよい。まだ教師主導の「教え る」授業が多く、子供主体の「学びたい」授業への転換が遅れている方がいらっしゃるので学校や教科全体で行う とよい。
(1) 授業の課題とメタ認知(子供主体とは遠い授業) <子供の授業中の様子> □ 教師に向かい話している
□ 子供が板書を写している
□ 教師の指示を待っている
□ 挙手をする子が決まっている
□ 子供が個々に教師に向かい話す
□ ノートへ積極的に書こうとしない
□ グループ学習ではいつも見ている子がいる
<教師の姿勢> □ いつもしゃべっている □ 子供の発言を解説する □ 子供と一問一答が多い(黒板の前から離れない) □ 板書を書くことに徹している □ 発言した子の後に「他にない。」と言う □ 挙手をする子(同じ子)に指名をする □ グループの代表の子に順番に発表をさせる
さて、上記に当てはまる項目はないだろうか? 子供がそうなってはいないだろう? こうした項目に該当する ことがあれば、子供は受け身の授業となっている。やがて意欲的に授業に参加をしなくなる。これらの多くの原因 は教師の話しすぎだ。発問した後、反応がないと心配になり、さらに問いかける。これでは教師が話している間は 子供は考えない。そこで「間」が重要である。「間」が子供の緊張感と、考えることの必要感を高める。
(2 )「教師主導から子供主体」への授業改善チェック(学習指導要領記載事項)
上記の項目を自己評価した上で、「教師主導から児童主体」の授業へ変えるために学習指導要領に記載された項目を自分の授業でのチェックを勧める。対策は、特に学習形態の工夫に注目し対応策をもつことが重要だ。
<教師主導から児童主体へ授業改善7項目(学習指導要領に記載事項)> □ 学習課題の設定(第1章第3の1(6) 自ら学習課題や学習活動を選択する機会を設ける) □ 学習に見通しをもたせる(第1章第3の1の(4)見通しを立てたり、振り返ったりする) □ 学習形態の工夫(第1章第4の1の(4)グループ別学習、繰り返し学習)「一人」「ペア」「班」「全体」)
□ 言語活動、思考操作の時間を大切にする(第1章第3の1の(2)言語環境の整備と言語活動の充実)
□ 「考察」をする(社会科第2節第1目標(3)多面的・多角的な考察や深い理解)
□ 一人一人の子供に役割を与える(新学習指導要領前文・協働的な学び)
□ 学習を振り返り自己評価をさせる(第1章第3の2の(1)児童による学習活動の相互評価や自己評価)
(3) 子供が主体となって進める授業づくり
授業の主体は子供であるという考えに立つと、児童による司会進行の授業スタイルに行きつく。多くの学校では、学習の流れ(先生を頼らず自分たちで授業を進める)を確立している。その上で、子供の司会による授業を行って いる。ご自分の担当する教科ではどうなっているだろうか。子供の司会のある授業を体験した先生は、子供の司会 のない授業にはもう戻れないはずだ。それは、子供が授業の進行を行うことで教師にゆとりが生まれ、話し合いの 内容が高まるよう見守り、助言できる等のメリットや何よりも子供の成長を感じているからである。
(4)グループ学習の日常化
授業展開は、一人学び、ペア、グループ交流、中ゼミナール(授業備品95号)や全体で考察という授業展開が自然である。そのグループ学習は4人編成が主である。これを全教科で行うことが重要だ。グループ学習は、小ホワ イトボード、中ホワイトボード、大ホワイトボード(10人位で考察時に使用)、付箋紙、短冊、名前プレート等を 使い、それぞれの考えを伝え合う。そうすることにより各自や班の考えを比較・分類し、 一つの意見に集約する活 動が増える。子供たちの思考力も高まる。
3 教師がいなくてもよい授業へ(備品 NO.145)
シンガポールを始め世界各国が教育を、知識注入型だけではなく個人と社会との相互関係・自己と他者との相互関係・個人の自律性と主体性等の人が生きる上での資質・能力の育成等に切り替えている。だが、日本の授業改善はなかなか進まない。事態は深刻である。
(1) 校内研修での教師評価項目は本当に正しいことか? 1学習内容に対応した目標やめあてを設定している
2「なぜ」「どうして」等の子供の思考を促し、考えたくなる言葉を発している
3児童生徒が理解できる言葉、速さで話し、既習事項を意識した発問をしている
4児童生徒一人一人に目と心を向け、個に応じた指導をしている
5教師が子供の発言を整理し、まとめを写させている
上記の評価項目等は、いずれも教師側から見た授業評価であり、子供側からの評価項目ではない。子供が授業を創る観点からみると、こうした項目は当てはまらないと思う。授業は教師が創ると思われがちだが、実は子供が創ることが当たり前のことだ。そのため、教師の指導とは何かを改めて問い直すとよい。そうでないと変化の多いこ れからの社会には、子供たちが対応出来ないと思う。学習指導要領に記されている子供が「付けるべき力」は、今 後は予想もつかない内容が加わる。だから教師の授業評価観も変える必要がある。
(2) 学習指導要領の解釈を狭めていないか?
学習指導要領に「アクティブ・ラーニング」という文言がなくなったという方もいる。だが、学習指導要領総則P4には「アクティブ・ラーニングの視点にたった授業改善」と記述されている。深い学びにつながるためのアク ティブな学びが奨励されていると解釈をしている。
また、学習指導要領P4には、「これまで地道に取り組まれてきた実践を否定し、全く異なる指導方法を導入しな ければならないと捉える必要はない。」との記述がある。そのためか相変わらず教師が「教える」から離れられない 授業を見る。子供ができることまでも教師がやってしまう授業だ。確かにこの方法でも学力は身につくが、一旦、 教えまくる(教えたがる)そうした指導者から離れた子供は、翌年度に予想もつかなかった行動に走る。お膳立て の授業に慣れたため、子供の語彙が減ってくるのだ。教師の矢のように発する言葉に慣れた子供たちは、子供同士 や教師と「単語」で合図を送るような会話をする。受動的な授業の結末だ。こうした状態から考えると、「これまで 地道に取り組んできた実践」も問われる。教師主体の授業をよしとしてきた実践が問われることは確かだ。
(3) 教師がいなくてもよい授業か?
これまで学習過程スタンダードを日本中にご紹介してきた。幸い学習過程スタンダードが浸透し、子供たちも問題解決的な学習過程にも慣れた。当初は教師向けの学習過程スタンダードとして作成したが、日を追うごとに子供 たち自身が教師と同じように学び方を身に付けた。学習過程スタンダードは型であると厳しい批判も浴びたが成長した子供の姿を見れば、一目瞭然である。学習過程スタンダードの浸透に悩んでいる学校もあるが姿勢は立派だ。 なお、初めは予想しなかったも起きた。「教師を頼らず学ぶ」ことが確実に出来たからだ。これまでの授業の常識 であった「教師が教える」が覆り、子供たちは自分たちで学ぶようになった。その結果、学力が自然と向上しただ けでなく、子供誰もが居心地のよい学校・学級となった。学級活動と授業が連動した結果だ。 子供は学習過程スタンダードで学び方を身に付けたことにより、益々教師への存在度が低くなった。その裏には、 子供を信じ、授業を子供に委ねるという教師の姿勢があったからだ。これは、いきなり出来ることではない。子供 たちが学び方を一つ一つ覚え、自分たちのサイクルで授業を回せるようになるまでには時間がかかる。それを教科横断的に行う。これまで教師が行ってきた板書や授業準備等も子供たちが行う。まさしく、自分たちの学習は自分 たちで行う。高知県での訪問校の多くはかなり教師がいなくても授業が出来るようになった。 学習過程スタンダード進化形の一つが「セルフ授業」だ。通常の学校であれば教師が不在の時、自習が多い。だ が、学習過程スタンダードを身に付けた子供たちは、教師がいなくても自分たちで授業を進める。中学校の英語の 授業では、子供の学習リーダーが「オールイングリッシュ」で授業を進めている。これまで考えられなかったよう な「教師をこえる授業」さえ出てきている。これが本来の授業の姿かもしれない。
4 今一度「主体的」を問う(備品 NO.143)
訪問校を周ると、授業が変わっていない学級がある。違う学校では、中高生が教師を頼らず、自分たちで学ぼうとする素晴らしい授業を見る。その差は何か。「主体的」のとらえ方が違うことに気付いた。 これまで、学習指導要領改訂にあたっては、何度も「主体的」という語彙が使われてきた。当然、今回の学習指導要領でも「子供が主体的な授業」から乖離することは許されない。だが、現実はそうではない。「教師が主体的」 な授業となっている。その授業スタイルを変えなければならない。
(1) 学校や教師の認識の違い(言い訳にしていないか?) 「主体的な学習は分かるが・・・・」。過去の考えから抜けきれない。教科書の内容を教えておけばよい・・。基礎基本の習得が重要・・。授業規律の徹底が重要・・。教師が教えるのが授業・・。
(2)授業の分類
1教え込みの授業(予備校型) 教師が一方的にしゃべり続け、知識を身に付けさせる授業。教師が知っていることを教えたがる授業。
2一見対話型授業と称するが実は教師主導の授業(この授業が多い) 教師と子供との一問一答が多い。教師が黒板にまとめ、子供が写す。研究協議会でも主体的と説明する・・。
3子供が主体的な授業 教師を頼らず自分たちで授業をアクティブに進める授業 本時の課題(めあて)があり、一人で考え、仲間と情報交換をして自分なりにまとめて振り返りをする授業。
(3) 学習指導要領の「主体的」の説明 学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら、見通しをもって粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」が実現できているか。
(4)「主体的」な子供の5つの姿(東京都) 1自己決定力がある 生徒指導3原則の一つである。自分のことは、自分で決める。 2自己を表現できる 自分の考えを言葉や付箋紙やホワイトボード等を使い、仲間に伝える(表現)をする。
3積極的な行動がある 自分の考えを積極的に仲間に話し、授業を盛り上げようとする。 4自己の方向付け 学び方を身に付けた上で、見通しを立て、学びを振り返るようにしていく。
5自己の興味・好奇心で動く 自分の関心事に目を向け、積極的に学びに向かう。
(5)「教師主導の教え込み授業」から「子供全員活躍型」の授業への転換
1子供たちの人間関係を良くする(授業構造2層目) 授業の基本は,子供達同士の良好な人間関係を構築することである。「分からないことは分からない」と言える学級にする。子供と教師が協力して、安心して学べる学級風土を創る。 2子供に授業の進行を委ねる(授業構造3層目) 教師が一人で授業を行えば「楽」かもしれない。教師はそうした授業に慣れている。だが一部の子は育つが授業 についていけない子が出る。子供に授業の進行を委ねれば、子供の自己実現につながる。授業にもキャプテンを作り、授業の進行を委ねるとよい。キャプテンがいない授業は過去の授業として欲しい。
3進化型学習過程スタンダードに向かう(授業構造3層目) 問題解決的な授業スタイルで、子ども達同士で意見や考えを交流し、内容を理解していく。教師は、子供同士が 考えをつなぎ合い、教え合い、学び合う学習集団となるように支援をしていく。 *真に「子供が主体的な授業」が出来れば、「教師のいらないような授業」となる。そこが目指す授業であろう。
5 授業づくりと生徒指導との連動(備品 NO.121)
子供の問題行動に対して、生徒指導を行うことはごく自然なことだ。しかし,それだけでは,また別の問題が起きる。子供の願いや期待に応えていないからだ。そこで学校生活で最も多くの時間を要している「授業」に注目し、 その時間の中で子供の自律性と社会性を高めるとよい。生徒指導と連動する授業を行うことが重要である。
生徒指導と授業と連動した授業を行うためには、学級の基盤づくり(生徒指導の3機能による学級の基盤づくり) が大切である。生徒指導の3機能を生かした授業づくりとは、1自己存在感を与える(見通し・自力解決) 2共 感的な人間関係(ペア・グループ・ゼミ形式) 3自己決定の場(振り返り)を与える等のある授業である。すな わち、子供同士をつなげて学ばせる授業だ。
それには、まず子供が安心して学べる「学びに向かう学習集団」でなければならない。授業において、子供一人 ひとりが自分の発言に対して仲間から意見や質問が返ってくる、自分の考えを受け止めてくれる環境等があること だ。そうした環境があれば、子供の問題行動は少ないし出ない。授業の中で生徒指導を行うとよい。
では、生徒指導と連動する授業とはどんな授業だろうか。「学習スタンダード」であることは間違いないが、具体的にはそこまで記述していない。そこで、これまでのご自分の授業を振り返ってみるとよい。授業の中の活動が、 1先生の話を聞く 2正解を出す 3板書を写す 4反復練習だけとなってはいなかっただろうか。これでは授業 についていける子はいいが、そうではない子は「授業を見るだけ」となる。こうしたことが続けば、子供の成長が望めない。教師の責任は大きい。
<授業の中で成長を促す機会「ペア学習」「班学習」「中グループのゼミナール」>
授業の中で子供が大事にされている実感は、「学習スタンダード」の中の「ペア学習」「班学習」「中グループのゼミナール」の場である。少人数を単位とした学習形態は、子供同士が学習内容を共有化する上でも大変有効で あるし、どの子も学習への意欲が増す。
この学習形態においては、学習をリードする子供が出てくる。教師はこれまでその子供を生かし授業をしてきた が、「傍観者」をつくってこなかっただろうか。形では全員が参加しているように見えるが実は、本当の意味での 全員参加型の授業ではないはずだ。
これを解決する方法が「教科リーダー」である。教科リーダーが学習活動を見通し、学習内容や方法を伝達する ことで学級全体の学習力を強化することができる。教科リーダーが学習の進行役を担うことができれば、教師にもゆとりがうまれる。その分、教師が手を掛けなくてはいけない子の指導にも時間をかけることが出来る。また、机間指導を充実することもでき、結果的には子供全員の学習内容の定着を高めることも出来る。
◎学習がどうしても理解しにくい子供は授業に見通しがもてないと不安になる。出来ない自分にも嫌気をさす。こ のことはやがて学級の仲間や教師に伝わる。混乱も起きやすい。そうしたことをぜひとも避けたい。分かる授業の 前提は子供全員が学習に参加出来ることから始まる。生徒指導と連動する授業にするために全員が参加出来る少人 数の授業の場面を今一度見直してみよう。
6 ユニバーサルデザインに基づく授業づくり(備品 NO.137)
「授業でのユニバーサルデザイン」とは、 教科教育と特別支援教育の融合をめざすものであり、「学力の優劣や発達障害の有無にかかわらず、すべての子供が、楽しく『分かる・できる』ことをめざし、教科における工夫や、 さまざまな子供への配慮、個に特化した配慮を駆使して行う、通常学級における授業のデザイン」であるとしてい る。(国立特別支援教育総合研究所発達障害研究情報センター長・廣瀬由美子氏)
(1)学習指導要領でのUD 新学習指導要領では、通常の学級のすべての教科において授業(学び方)のUD化を促している。
(2)授業づくりのユニバーサルデザイン ユニバーサルデザイン授業 (UD授業)は、すべての子供にとって学びやすい授業である。教師と一部の子供が推 し進める授業ではなく、全員の子供が参加し活躍できる授業である。ALを進める一つの方法である。
(3)UD化のキーワードは「焦点化」「視覚化」「共有化」 ①「焦点化」(授業の「見通し」の部分にあたる) 1学習内容の焦点化
たくさんの学習内容を授業の中に組み込むのではなく、「今日、学習する内容はこれ(学習課題)である」と明確にしておく必要がある。 「キーワード」も内容の一つである。進化型学習過程スタンダードは、 授業の開始後、子供が作成することになる。 2学習方法の焦点化 学習方法が理解できれば、すぐに子供は学習に取り組むことがで きる。何をどんな順番でどのように取り組みどこで終わるか、答え の見つけ方は・・・等を指導者がはっきりと具体的に伝える。
3アイテムの焦点化 今日の授業で使う用具等を紹介する。辞典や図鑑、教材・教具、ホワイトボード、タブレット、短冊等を使うこ とを知らせておく。 ②「視覚化」 1板書の視覚化 授業の進行予定や目当て、まとめ等が事前に黒板に「グッズ」として掲示する。そのグッズを見れば、どのよう に授業が展開していくかが分かる。
2ホワイトボードの視覚化 ホワイトボードには、全員が書くことが必須の条件である。どの場面で使うかをあらかじめ決めておく。なお、 班で書いたホワイトボードを1班から順に発表することはNGである。各班から出されたホワイトボードを比較分 類した上でから考察を行う。
3ノートの使い方の視覚化 学校全体でノートの使い方を統一しておく。指導者に子どもが合わせるノートではなく、あらかじめ学校として決められた様式のノートがよい。見開き2ページが妥当である。 ③「共有化」 1様々な学習形態の中での共有化 学習活動を共有するには、学びのモデルであるペア学習やグループ学習が機能する。少人数の中での話し合いは、どの子も発表が出来る。 2教科リーダーの共有化 授業は子供が主体的であることが大原則であるので授業の進行は子供の教科リーダーが行うとよい。学習活動を 見通し効果的に進めるリーダー的存在となる。「教師がいなくてもよいような授業をつくる」ための柱になる。
7 アクティブ・ラーニング(子供の二つの反応の違い(備品 NO.115)
アクティブ・ラーニングは、教師による一斉講義型の授業ではない。子供全員が活躍できるように主体的に授業に参加し、対話をしながら、深く考えていく問題解決型の授業方法である。高知、熊本、東京を回る中で転任者や新人の方に課題が見えた。「一斉講義型授業(教師がしゃべりまくる授業)」が多く、「問題解決型授業」に大至急転換をしていただきたいと願う。
<A学校 問題解決型授業>
常に子供が自分たちで学習課 題を見つけ、自分たちで解決でき る達成感を味わうことでき、日々の問題を解決できる。 子供の反応 「七夕といえば?」→「ベガ!」「アルタイル!」「調べたいな」 <B学校 一斉講義型授業>
教師が講義をする授業が当 たり前と考える子供は、教師 の説明を待つ受け身をとり、主体的に学ぼうとしない。
子供の反応 「七夕といえば?」→ (・・先生が言うだろう)(・・誰かが言うだろう)
手っ取り早く教師が知っていることを教える、教科書の中身を教える、これでは子供は学びに向かわない。全教科で日頃から問題解決型の授業を行い、子供が主体的な授業を行い、学びに向かう力を育成する。
一斉講義型授業特有の「知識」は、 他の手段で容易に手に入る。多弁な教 師の授業は、「授業が分からない子」に とって、苦痛な時間だ。教師が知って いることを話そう話そうとすることが 原因だ。教師が主役の授業は、子供た ちの主体性を奪う授業となっているこ とに気付いているだろうか。
アクティブ・ラーニングとは,一斉講義型の学習ではなく,一人ひとりの子供が主体的に授業を創り、仲間と付箋紙や ホワイトボード等を使い、対話をしながら学習内容の理解を深める学習のことだ。
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