授業備品 NO.295(2025.11.27) 京都府K中式生徒が教える授業(セルフ授業)
- 西留安雄

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京都府K中式生徒が教える授業(セルフ授業) レポ宮本治(岩出市教委)
令和7年11月26日、京都府K中で開催された校内授業研究会に参加した。昨年度も西留氏から「2年目だけれども、大規模校でもがんばっているよ。」との紹介を受けて研究発表会に参加した。
K中は生徒数が現在800名弱、今後は900名に近づく増加傾向の大規模校である。授業改善としての「セルフ授業」にも段階的に取り組んでいる。「自己決定の場を与える」「自己存在感を与える」「共感的な人間関係を育成する」という生徒指導の三機能は、「K中式生徒が教える授業(セルフ授業)」とリンクしている。
今回は若手教員中心に初めて「セルフ授業」に取り組んだということであった。そこでは、若手教員の「セルフ授業」に挑戦している姿、初めてだが教師役の生徒が戸惑いながらもがんばる姿、事後研修で生徒の代表(公開授業5クラスの教科リーダー)が大人の前で堂々と自分たちの学びを語っている姿を見ることができた。
K中の「セルフ授業」は、教科リーダーが司会原稿を使い、教員と相談しながら進行する形式を取っている(写真①・②)。見学した2年生の2クラスでは、New Wordsの発音練習の進行、ペアやグループ活動の指示、活動時間の設定、発表グループの選択や発表者の選択(写真③)などを教科リーダーが行っていた。「セルフ授業」の導入段階では効果的な方法であり、慣れてくれば司会原稿を簡素化し、自分の言葉で進められるようになるだろう。

今回の研究会では、初めて事後研修に公開授業5クラスの教科リーダーも参加し、授業の感想の発表や質疑応答に挑戦した。その生徒たちの語りを紹介したい。
「初めてやってみて、以外とみんな反応してくれたり、笑ってくれたりして、緊張した面もあったけどとっても楽しい機会になりました。いろんな人の前で発表する力や勇気が今日で生まれたと思います。」(1年A)
「初めての授業だったけど、好きな授業の説明ができてよかった。」(1年B)
「積極的に自分から取り組んでいくことができるようになった。」(1年C)
「この授業を練習したとき、マジで全然出来なかったから心配だったけど、結構できてうれしかった。」(2年D)
「初めてクラスのみんなの先生役として授業をやらせてもらって、経験が全然無いからつまずくことやつまることもあったけど、いい経験になったと思います。」(2年E)
「初めて教師役をやってみて気付いたことがあって、それは時間を結構気にしないとダメってことがわかりました。それにみんなをまとめることが難しいと感じました。」(2年F)
「前までは人前でしゃべるのが苦手だったけど、今回クラスのみんなをまとめることができて達成感を感じることができました。」(2年G)
「私が今回やらせていただいて、小学校からの変化だったり、立場が変わることでどうしたらいいのかという立ち回りとかが難しいと感じました。小学校からの変化ですと、小学校は先生がほとんど主体でやっていたので、自分たちでやるとなると先生がいつもやっていることってどうだったっけとか、先生がやっていたけど自分でやってみると上手くいかなくて、もう少しうまくやりたいなと思って、先生のサポートが時々あってそのおかげですごくやりやすくテキパキと活動できたかなと思います。」(3年H)
「私は今まで人前に立つことが少なかったのですけど、今回初めてみんなの前で教師役として授業をやった。今回は先生が準備してくださっていたが、実際は自分で準備とか片付けとか一人でやらなければならないので、これからは周りを見ながら行動して、時々先生の手伝いとかも出来たらいいなと思います。」(3年I)
Q『明日、先生が休んだら体育出来ますか?』(西留氏)
「先生みたいにどうすればいいかわからないのですけど、台本を先生が作って下さっていて、それにほとんど従っていたので、それに似たようにがんばったらできると思います。上手くはいかないと思いますが。」(3年H)
「まだまだ先生みたいに授業を進めることは一人の力ではできないと思うのですが、Hさんと一緒とか、クラスのみんなが協力してくれたりしたらがんばって授業をやりきれるんじゃないかと思います。」(3年I)
Q『体育だと怪我が起こりうるのですが、どのように授業を指導する立場で考えましたか?』(参観者ア)
「できるだけ生徒が怪我しないように、危ないことしていないかなとできるだけ周りの様子を見たり、できるだけ全体がかたまって動けるようにした。持久走で自分が走っている時は後ろが見えないけど、できるだけ少し体を横にして大丈夫かな周りに体調の悪い子がいないかなと時々気をつかって見るようにしました。」(3年I)
Q『いくつかの教科でこのような授業をしていますが、全教科でできますか?』(参観者イ)
「全ては難しいのですが、やれるかもと思います。」(2年E) 「やる気があればできると思います。」(1年A)
Q『先生がやっているときと自分たちでやるときの違いは?』(参観者ウ)
「先生がやっているときは、先生は専門的なことをたくさん知られているので、そのことについて詳しく教えて下さったり、豆知識もたくさん教えて下さることもあって、生徒はまだ知らなかったりとかすることがある。先生みたいに詳しくはできないけど、同じ立場だからこそわかりやすくとか話しやすくってわかるところは説明しやすいというところの差があるかなと思います。」(3年I)
「生徒が授業している時と先生が授業しているときの違いで気付いたことは、先生が授業しているといつも通りなので寝ている子は寝ているんですよ。けど、生徒が授業していると珍しいとか仲のいい子が授業してたりとかして興味を持ってくれる子が増えて寝ている子が少ないかなというイメージがありました。」(3年H)

たどたどしいながらも素晴らしい語り。そして、台本なしの臨機応変な応答。私たち大人は中学生の持てる力、見抜く力、語る力を見くびっていないか。また、まだ実践されていない先生たちはどう思われただろうか。
小学生だとこのような「セルフ授業」を実践するには、多くの仕込みの期間が必要になる。しかし、中学生なら司会原稿やお手本を示すことですぐに吸収して、短期間の仕込みにより自分たちで工夫しながらできるようになる。全国的にみても中学校での実践は、導入までに困難さを伴うが、始まれば一気に進む傾向がある。ホップからステップに進んだK中の取組は、おそらく一気にジャンプまで行くような予感がする。
西留氏が講評で指摘した課題である ① 授業中の生徒の動きを増やす ② 同学年合同授業、異学年交流授業への挑戦 ③ 多様な学び方(ゼミナール方式、三色ペン考察方式、班集合型方式など)の習得 ④ 生徒が参加する授業評価・授業研修・研究協議会の実践 ⑤ 学習指導案から学習活動案への展開 を一つずつクリアしていけば、生徒たちは自走するようになり、教員は伴走者として余裕を持って必要な学習支援ができるようになり、負担軽減にもつながっていくと考えられる。K中の取組は、へき地校だから小規模校だからできるというような考え方を打ち破り、どこでもできるというお手本になっている。
京都府木津川市立木津中学校 学校公開の案内 ①日時 令和7年12月9日(火)13:05~16:45 ②流れ 13:05開会のあいさつ 学校の概要説明 ③公開授業(生徒が教える授業)1年理科・数学・道徳 2年英語・社会・道徳 3年保体 ④申し込み先 学校0774-72-0007 北澤090-3708-8928 *2年目に飛躍した大規模校。授業で生徒の活躍やたくさんの笑顔が見られる。ぜひご参加下さい。 |



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