授業備品 NO.299(2026.2.7)兵庫県阿万小「阿万スタンダード学習」
- 西留安雄

- 15 時間前
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兵庫県阿万小「阿万スタンダード学習」
レポ 宮本 治(岩出市教委)
令和8年2月7日厳冬、兵庫県A小で開催された授業研究発表会に参加した。ぜひ県外での取組を発表して欲しいという西留氏からの依頼を受けたことや、今まで中学校での取組を中心に研究会に参加していたが、小学校で成果を上げている取組を実際に見てみたいということが理由で参加した。
この発表会には、兵庫県内の教員を中心に大阪・京都・滋賀・和歌山・高知・神奈川・熊本の教員や教育委員会関係者、大学院生も参加し、全国の様々な立場からの広い意見交流・研修ができる場にもなった。特に、実践発表の時間を設けることで、阿万小市内地域や小中の校種を超えた研修の機会になったに違いない。
さて、阿万小での西留氏による指導と8年間に及ぶ「阿万スタンダード学習」の取組であるが、当日の3学年の公開授業と実践発表の内容からその特徴をまとめてみたい。

【 阿万小研究主任の実践発表から 】
まず、研究のスタートは「今の授業方法で子供の願いに応えられているのか」という手詰まり感から、一斉授業からの脱却を図るべく「友達と学び会うことを基本とする」「安心して学べる」「子供たちがわくわくする」授業を目指す「全員活躍型授業」に方向性を定めた。そして、「児童が主体的に課題を解決する」「みんなで授業を作り上げていく」「考えることや発信が楽しくなる」「挙手、指名、発表だけ、座りっぱなしを無くす」といった具体的な内容を盛り込んだ『学習スタンダード』を作成することを検討した。そこには、45分の授業の流れ(見通し、自力・集団での解決活動や考察、まとめ、振り返り)を学年・教科に関係なく統一すること、教師が「教えるプロ」から「学ばせるプロ」を目指すこと、ホワイトボードを効果的に活用すること、「阿万スタンダード学習の手引き」を作成・活用すること、全学年で板書とノートの書き方を統一することなどを書き込んだ。また、ノート交流「きらりノート掲示板」、上級生の授業を参観する機会の設定、校内研修(1人1授業)の充実などにも取り組んだ。この『学習スタンダード』は毎年更新しながら、新しく赴任した教員の授業の指針にもなった。
これらの様々な取組によって、子供たちには主体的に学ぶ姿勢が高まり、子供同士の話し合いが活発になり、現在では自習の時間は見守りの教員が付きながらも「セルフ授業」でできるまでになった。子供たちへのアンケート結果でも、現在の授業方法は好意的にとらえられている。
今後は、学び方を自己決定できる場の設定や考察場面での深い学びができることを課題として、課題の複数化や学ぶ場の選択、学びの深め方の工夫などに取り組み、現在の研究をステップアップしていく構想を持っている。
8年にわたって子供主体の授業改善について研究・実践を続けてきたことが素晴らしい。少しずつ研究内容を進化させながら、長年にわたって続けていくことは並大抵のことではない。しかも、現行・新学習指導要領の主旨に沿って未来を見据えた研究を続けていることは、見習うべきところが大きい。さらなる研究継続と研究成果の地域や全国への発信を望みたい。
【 3つの公開授業から 】
当日は、1年生国語科、3年生算数科・6年生家庭科の公開授業を参観したが、前述の実践発表の研究内容がよくわかるものであった。その場面をいくつか紹介したい。
① ホワイトボードの効果的な活用〔左から1・3・6年〕
(移動可能なキャスター付、グループで囲んで記入・考察、共通点を赤ペン・相違点を青ペンで線引き)

② 板書の統一〔左から1・3・6年〕
(統一した板書グッズ、まとめの書き出し、低学年は教師・学年進むと学習リーダーが板書)

①~⑥に紹介した授業中の子供たちや教員の姿は、阿万小の『学習スタンダード』にある授業改善の工夫の一部に過ぎない。阿万小の授業風景に見られるのは、子供たちの笑顔と真剣に授業に向き合う姿、そして、まだまだ全国的に多い教員の一方的な指導と子供たちが座りっぱなしの授業風景とは違う、子供たちが生き生きと主体的に活動し、教員がサポート役として子供たちの活動を支援する姿であった。
学年が上がるにつれて学習リーダーの活躍が目立つようになり、授業中の教員の喋りや出番が少なくなり、いわゆる「教員が気配を消す」様子が見られた。6年生の授業者は、グループ考察の時間に、教室から離れて1年生や3年生の授業の様子を参観に行く余裕さえ見せた。当然、6年間積み上げてきた授業改善の充実と日頃の子供たちとの信頼関係によるものである。
学習リーダーによる「セルフ授業」ができる体制が整えば、教員が休んだ時にも授業が進み、研究授業の時にも当該クラス以外は欠課することなく授業が進み、教員の働き方改革にもつながることになるだろう。
【 各実践発表の内容から 】
今回の発表会では、阿万小のある南あわじ市内から小学校2校、高知県の小学校1校、神奈川県と京都府の中学校、和歌山県I市教委からの実践発表が行われたので、その一部を紹介したい。

南あわじ市G小からは「言葉の力」をつける実践、J小からは現時点の子供たちの持つ「保有アイテム」確認とめざす授業像や子供像の共有から「ペア・グループ学習の自由度アップ」を図る実践が発表された。
高知市Y小からは、阿万小同様の学び合いを充実させる授業づくりと工夫改善、学習リーダーの育成、ホワイトボードの活用、「自己決定による主体性を育む思考・学習方法・表現・課題・振り返りを選択させる授業設計」などの実践が発表され、その成果は令和8年12月12日(土)「高知県授業づくり研修会」で発表予定である。
高知県からはO小からの発表も予定されていたが、急遽欠席となった。(O小の実践は、西留氏のブログ「授業備品」№181・249など参照)
神奈川県N中からは、若手教員二人が7年間の授業改善の実践による成果と生徒主体の授業づくりから学校づくりへと発展させている様子が発表された。(「授業備品」№272・290など参照)
京都府K中からは、800人近い大規模校における「K中式生徒が教える授業」のこれまでの生徒指導上の困難さを抱える中での実践の苦労や学校づくりの実践が発表された。(「授業備品」№295参照)
和歌山県岩出市教委からは、西留氏の関わる実践校での取組が現行・時期指導要領の主旨に沿うものであり、各校で大きな成果を上げていることを紹介した。また、新たな「自立」の解釈についても紹介した。
「自立」= 一人で抱え込む、助けを求めない「孤立」ではなく、自分の状況を理解し、他者との適切な関わり方(頼り方、助け合い方など)を学び、自己決定して、主体的に、より豊かな人生を生きること
【 西留氏の講評から 】

阿万小のある南あわじ市から多くの教員が出席する研究発表会に、南あわじ市外や他県からの参加があったり、他県の実践発表や校種を超えた実践発表があったりすることで、多くのことを学ぶ機会を得たことは大切なことである。阿万小を中心に、南あわじ市内全体にこのような研究風土を構築してほしい。
12月に高知県で発表会のあったM小中では、「学習スタンダード」の実践により学力が向上する結果が出た。全国の他校での実践の成果からも同様の結果が表れている。子供主体の授業づくりは、得てして学力向上につながらないと思われがちだが、決してそのようなことはない。
南あわじ市では、「学ぶ楽しさ日本一」をスローガンに様々な取り組みを行っているが、先生と学ぶ楽しさでなく、仲間と学ぶ楽しさ日本一をめざしてほしい。
ある新聞社のアンケートで「近年、増えてきたと感じる傾向の子」「今の学校では対応が難しいと思う子」との質問に、「コミュニケーションが苦手」「登校・学習意欲がない」「読む・書くが苦手」などの項目が上位であった。そんな中、子供主体の取組を実践している学校では、これらを解消するような成果を出している。
次期学習指導要領の主旨から、「子供主体の学習活動案」「子供主体の研究協議会」への転換を図るべく、次のような視点を提案したい。①問題解決学習過程の簡略化、②子供が記述する学習活動案、③子供たちが行う研究発表(進行も含め)、④教師も参加する子供研究協議会(見える化数値化した授業評価)。
全国の他校の授業実践や進化した「学習スタンダード」に学び、自校化した実践を推進してほしい。教員は授業中、気配を消し子供を前面に押し出した取組を進めてほしい。




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